真夏の夜の夢
あの日の夜、本当に、絶とうと思ったことは、事実として残る。
辛いくせに、悲しいくせに、寂しいくせに。まともな捌け口がない。その原因も全て自分で。だから無理やり抱え込んで。
それでも、なんら変わらないフリをして、笑って生きる。いつもみたいに。
その日は、私が望む形の幸せを手に入れて生きる方と話す機会が沢山あった。将来への不安が、私とは違うステージにある、私が行きたいところで生きてる人たち。
ただただ襲う劣等感。
色々と、まだ私の方が自由はあるだろうし、若さだってある。それなのに、劣等感で押しつぶされそうになってしまう。節々から感じる、圧倒的な自信。やはり違うのです。
私がそこまで行ける日は、来るのでしょうか。
友人からの軽い裏切りも、男のひとを更に更に、信じられなくなる出来事もあったことが、きっと追い討ちをかけていたのかもしれない。
帰り道の電車、連休前で混むそれに乗り込み、吊り革を握り、いつも通りの音楽を流す。
…私はなにをしているんだろう。
目の奥がツンとなる音を感じるほどに、涙がすぐそこまで来た。グッとこらえ、俯く。目を閉じる。溢れてしまわないように。これ以上、泣かなくて良いように。
駅に着くと、まさにバケツをひっくり返したような雨。私は日傘しか持っておらず、それを指して歩き出す。道は半ば浸水し始めており、下ろしたてのパンプスもあっという間に浸かる。
イヤホン越しにも聞こえる雨の音。
少し前までなら、私は愛おしい人は電話をしていた時間。
今では、かけることも許されない。そんな風に考えていると、とめどなく涙は溢れてきた。雨にと一緒に溶けてしまいたい。あれほどの大雨だったのに、誰もいない家へ帰る足取りは重かった。
家へ帰る。愛猫たちが寄ってくるかと思ったが、餌は既に誰かが与えたあとらしかった。
鞄は玄関に投げ捨て、身に纏う全てを洗濯機へ放り投げ、バスタオルで雨を拭う。
そのまま布団に潜り込む。
無意識に手は、私を苦しめるモノを探していた。見つけたのは、動物の被り物。下が長く垂れ下がっていた。
私はそれを被り、左右の紐を首に巻き付け、何度も何度も締めた。
家族から何度も電話が掛かってくる。音が遠のく。
暫くして、母親が帰宅。被り物はあっさり取り上げられた。
雨に濡れたから拭いた、そう嘘をついた。
人を信じることができないのも、臆病なのも、いつもいつも孤独を感じるのも、結局自分に自信がないからなのだろう。
どの方向へ努力を重ねれば、自分に自信を持てるのか、わからない。
初めてここで文字を綴ってから2年の歳月が流れた。まだまだ鮮明に覚えている。初めは、パソコンで書いていたなぁと、思い出せる2年前の夏。古賀紗理那さんに出会った夏、彼と近づいた夏。
昨年の夏、一生の中で1番の夏。キラキラして、切なくて、宝物の夏。
来年は、今年の夏をどんな風に振り返るのかな。そんな風に考えることが出来るから、やっぱり軽率に命を放棄してはいけない。
前を向いて、生きなければならない。
真夏の夜。愛猫2匹が私に寄り添い、眠っている。
今日は、どんな夢を見るのかな。
夢でいいから、会えたらいいな。
2人きりの世界で。